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再生医療産業におけるパイロジェンフリー洗浄の可能性
再生医療産業は医療フェーズに入りつつあり、細胞製品の品質担保が必要です。細胞製品の品質を保つには徹底した資材管理が求められ、試薬はもちろん、培養工程で用いる容器や薬液の送管で用いる器具や各種配管部品等の関節資材などが対象になります。この容器や間接資材の品質管理において有効とされる方法の1つに「パイロジェンフリー洗浄」というものがあります。
当記事では、再生医療産業における資材管理の問題と、それを解決に導く3種類のクリーン洗浄について詳細に解説します。さらに、パイロジェンフリー洗浄の可能性についても触れるため、資材の品質を維持したい方はぜひ当記事をお読みください。
1.再生医療産業において資材管理で何が問題になっているのか
近年、再生医療は研究のフェーズから徐々に医療のフェーズに入りつつあります。それに伴い、治療用の細胞製品として品質を担保できる製造工程の必要性が増しています。
製造工程で使用する器具や装置は多岐にわたり、培養容器や分注器具、保存容器、無塵衣といった消耗資材や、安全キャビネットや電子顕微鏡、各種精密測定機器などの装置など数多くあります。
消耗資材は基本的には滅菌品で、かつディスポ使用の場合が大半で、「クリーン」な状態のものを使用することになります。装置や設備についても、品質維持のための定期的なメンテナンスが入ります。しかし、クリーンと思われる消耗材や装置や設備に付属している部品類には課題があります。
消耗材は、例えば培養容器や工程で用いる器具類は海外製のものであることがしばしばです。滅菌済とは言え、異物混入があるケースも散見され、メーカーに改善要求を出してもその声が反映されることは期待しにくいのが現状です。
しかし、これまで使用している培養容器や器具を変えることは容易ではありません。なぜなら、これまでの研究実績が、使用している培養容器や器具の上に成り立っているためです。
装置や設備の部品についても、交換するほどではないものの定期的なメンテナンスを入れて一連の工程間にリセットしておきたいという潜在意識はあっても、適切なリセット方法に明確な決まりがないのが現状です。
以上のことは、今後再生医療がさらに医療フェーズに入り、産業化が進めば、大きな課題として顕著化すると考えられます。
2.クリーン洗浄とは
再生医療産業において資材管理の問題を解決に導く方法として注目したのが「クリーン洗浄」という技術です。
分野は異なりますが、以前から半導体産業においてパーティクルや油脂、微量金属イオンの除去などを目的として、一般的に利用されています。半導体製造工程において、パーティクルや油脂、微量金属イオンなどの混入は製品不良に繋がり大きな問題になるためです。
再生医療産業においても、パーティクルや溶出物は製品である細胞に影響を与える可能性が高く、パーティクルなどの除去は必須になります。
このように、業界は異なっても課題は似ています。
また、再生医療産業の製造工程においてはプラスチック製品の使用が一般的です。しかし、プラスチック製品の製造時に皮脂や油脂が付く可能性があります。プラスチック製品を製造する際に付いた皮脂や油脂が、製品の表面に残存している可能性も否めません。
クリーン洗浄では油脂分の除去も可能です。この点において、資材管理の課題に対してクリーン洗浄は有効ではないかと言われています。
クリーン洗浄は大きく3つの洗浄方法に分類できます。
2-1.純水洗浄
純水洗浄とは、容器を純度の高い水(純水)で精密洗浄し、容器の表面に付着している微細なパーティクルを除去する洗浄方法です。主にクリーンルーム内で使用する容器に適した洗浄方法です。
純水洗浄では、CLASS1000のクリーンルーム内に設置した超音波洗浄槽内の純水を使用して、受入検査を終えた容器を超音波洗浄します。洗浄後に純水でリンスした上で乾燥させた容器は、出荷検査を終えるとCLASS100のクリーンルーム内で二重包装され、パーティクルなどに汚染されることなく梱包・出荷されます。
純水洗浄を行う容器に対しては、希望に応じて「付着パーティクル数」「残留イオン量」に関する評価試験を実施できます。純粋洗浄は、研究室や実験室のクリーンルーム内で安心して使用したい方におすすめの洗浄方法と言えるでしょう。
2-2.酸洗浄
酸洗浄とは、高純度の硝酸や塩酸、フッ酸などの酸を利用して、容器表面の微細なパーティクルや油分の除去(脱脂)、微量金属イオンを除去する洗浄方法を指します。
酸洗浄では、受入検査を終えた容器を脱脂洗浄・純水リンスした後、酸による薬液洗浄を行います。薬液を純水に置換された容器は、乾燥・純水リンス・出荷検査の工程を経て、最終製品として包装・出荷されます。
酸洗浄済みの容器を購入すると、企業側・研究機関側での酸洗浄の工程を省略し、作業時間の短縮や廃液量・薬液コストを削減できるといったメリットがあります。酸洗浄は、主に半導体製造現場で使用される容器や微量分析用サンプル容器の洗浄方法として重宝されています。
2-3.パイロジェンフリー洗浄
パイロジェンとは発熱因子のことで、体内において体温上昇作用を引き起こす物質です。
パイロジェンを孔径0.01μm~0.001μmのUF膜(限外ろ過膜)などで生菌とともに除去した精製水のことをパイロジェンフリー水と呼び、パイロジェンフリー水で洗浄する方法をパイロジェンフリー洗浄と言います。
パイロジェンフリー洗浄では、受入検査を終えた容器をCLASS1000のクリーンルーム内に移した後、最初に界面活性剤などで薬液洗浄を行います。次に純水でリンスした後、エンドトキシン基準値0.01EU/ml(実力値)を満たしたパイロジェンフリー水を用いて、専用の洗浄槽内で容器を洗浄します。
パイロジェンフリー洗浄では、容器表面に付着するパイロジェン(エンドトキシン)のほか、微細なパーティクルの除去も可能です。パイロジェンは、細胞の増殖や機能に影響を及ぼす物質として知られています。パイロジェンフリー処理をした容器は、細胞加工施設におけるクリーンルーム(CPC)でも安心して利用できるでしょう。
パイロジェンフリー水による洗浄を終えた容器は、製品の仕様に応じてクリーンルーム内での自然乾燥、または乾燥機内での乾燥といった処理を受けます。乾燥後はクリーンレベルの高い専用スペースで二重包装をした上で、梱包・出荷されます。容器の汚染を防ぐため、素手での開封・使用や個装を開封しての保管は避けましょう。
3.パイロジェンフリー洗浄の可能性
パイロジェン(エンドトキシン)は一般的な滅菌条件では破壊できない毒素である上に、プラスチック製品との親和性が高い物質です。パイロジェンの混入による影響はさまざまあり、in vitroでの細胞増殖や機能分化に影響を与えるほか、in vivo動物試験においても免疫反応を起こすなどのリスクがあります。
再生医療の分野における細胞培養でパイロジェンの混入を防ぐためには、手技を正しく行い、実験器具や装置、培地の原材料を清潔かつ適切に管理することが大切です。プラスチック製の実験器具・容器は細胞培養に不可欠であるため、品質や信頼性の高いパイロジェンフリーの容器を用いる必要があります。
パイロジェンフリー洗浄は、細胞培養のための実験器具を清潔な状態にするのに有効な技術です。独自のパイロジェンフリー洗浄のテスト測定では、洗浄後の残留エンドトキシン濃度は洗浄前の10,000分の1程度にまで減少するという結果が出ています。
パイロジェンフリー洗浄はパーティクルの除去のほか、洗浄工程の工夫により皮脂の除去も可能であり、細胞に悪影響を及ぼすパイロジェンの付着を心配する必要もありません。パイロジェンフリー洗浄は細胞製品の製造工程で使用する培養用容器や器具の洗浄には最適な方法と言えるでしょう。
パイロジェンフリー洗浄は、iP-TEC🄬のオーダーメイドにて対応しております。iP-TEC🄬の製品はもちろん、これから開発する容器や器具、他社製品の洗浄も承ります。詳細は以下のページをご覧いただき、お問い合わせは同ページ内にあるお問合せフォームをご利用ください。
オーダーメイド・製品開発 – 製品情報 – iP-TEC – プラスチック製理化学機器メーカーの株式会社サンプラテック (ablstd.jp)
まとめ
再生医療に用いる細胞製品の品質を維持するためには、あらゆる汚れの付着を防ぐ必要があります。製造工程で付着した皮脂や油脂などを除去する方法として、純水洗浄、酸洗浄、パイロジェンフリー洗浄の3種類が挙げられます。
中でもパイロジェンフリー洗浄は、容器表面に付着するパイロジェンのほか、微細なパーティクルの除去が可能です。
iP-TEC🄬ではパイロジェンフリー洗浄を取り扱っており、オーダーメイドで1個からの依頼にも対応しております。このほか、開発する容器や器具、他社製品の洗浄も承ります。洗浄を検討している方は、以下ページよりぜひお問い合わせください。