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学会付設展示報告~日本動物実験代替法学会 第37回@宇都宮~
iP-TEC🄬では今年6月に開催された「MPS World Summit 2024 @シアトル」の視察結果を受け(前回レポート:こちら)、今注目している「MPS(生体模倣システム)」に関連する「日本動物実験代替法学会」(11月29日~12月1日開催)に出展いたしました。テーマは“動物実験代替法の新たな潮流と社会実装への取組み”。学会は750名を超える参加者になり盛大に行われました。当記事はそのレポートとしてUPさせていただきます。
MPSとは
生体模倣システム(microphysiological system:MPS)の頭文字を取った略称です。MPSでは、容器やチップなどにより作成された微小な空間に、生体内(in vivo)に近い培養環境を再構築した生体外(in vitro)培養系のことです。
欧米では2010年頃から研究開発が始まり、既にたくさんの海外サプライヤーから様々な種類のデバイスが開発、上市され、製薬会社ではMPSが医薬品の研究開発に取り入れられ始めています。日本でも2017年以降、国としてMPSの社会実装に向けたプロジェクトが進められています。
MPSの利点とは
①精度の向上:
MPSはヒトの生体組織や臓器の機能を模倣するため、従来の動物実験や2D細胞培養よりもヒトの生理学に近いデータを提供します。これにより、薬剤の効果や毒性の評価がより正確になるといわれています。
②倫理的配慮:
動物実験の使用を減らすことができるため、動物福祉の観点からも支持されています。また、動物実験ではヒトとは異なる反応を示すことがあるため、MPSはこれを回避する手段としても有効だと考えられています。
③コストと時間の節約:
新薬開発のプロセスにおいて、初期段階での新薬候補の評価にMPSを使用することで、無駄な薬剤候補を早期に排除でき、開発コストと時間の節約につながる可能性があります。
④複雑な生体反応の再現:
MPSは複数の細胞タイプや組織の相互作用を再現できるため、従来の培養システムでは再現が難しい複雑な生体反応を研究することが可能です。これにより、より深い理解が得られ、新しい治療法の開発につながる可能性があります。
⑤個別化医療の推進:
患者の細胞を用いてMPSを構築することで、個々の患者に対する薬剤の効果を事前に評価することができ、個別化医療の推進に寄与することが期待されます。
日本動物実験代替法学会の付設展示出展の所感
展示物:閉鎖系灌流培養システム、灌流トライアルポンプキット、ライブ輸送資材一式
●日本におけるMPSは黎明期ですが、MPSを研究している或いは研究をしようとする研究者やユーザーには非常に評価が良かった一方、将来のユーザーになり得る製薬企業についてはまだまだ参加が少ない印象でした。
●サブ的に展示したライブ輸送資材にご興味いただける機会が多かったです。再生医療研究における治療用細胞の輸送と同様に、評価用細胞の輸送についても非凍結輸送要求があることを確認できました。
●創薬における一つの手法として、ユーザー側のMPS導入検討を促進させていくためには、まだまだ、MPSそのものの周知も必要であるし、実験方法の確立やバリエーションの提示、プロトコルの充実化をもっと進めていく必要があると感じました。
まとめ
iP-TEC🄬としても、閉鎖系灌流培養装置の開発や研究ニーズに応じた培養器具の開発をもっとスピード感をもって進めていく必要があります。今年3月に販売開始した「灌流培養トライアルポンプキット」(参照URL:こちら)に引き続き、さらに初動検証をもっと手軽に行えるおこなえるような「(仮称)ポケットタイプ灌流ポンプキット」を上市に向けて開発中です。
引き続き、情報発信をおこなってまいりますのでiP-TEC🄬をどうぞ宜しくお願い致します。