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細胞輸送で用いるiP-TEC®️シリコンカバーはどのメーカーの培養容器に適合するのか?
細胞輸送における非凍結輸送のことを指して「ライブ輸送」と表現されることがありますが、このライブ輸送を実現するためには、次のことが最低限要求されます。
- (1)細胞が収容された容器を培地で満たすこと
- (2)輸送中に容器から培地が漏れないこと
- (3)必要な場合はガス交換が可能であること
通常はフラスコや遠沈管といった、いわゆる閉鎖系の容器で輸送する場面が多いです。ただ、潜在的な需要としては、細胞培養で用いる「ウェルプレート」や「ディッシュ」のまま、外部に細胞を輸送したいといった声も多く聞かれます。これは、ウェルプレートやディッシュから輸送用の容器に移し替える手間やコンタミリスクを可能かぎり避ける必要があるためです。
ウェルプレートやディッシュはそれぞれ蓋が付いていますが、ガス交換が可能なように、わざと微細な隙間も設けており、密閉仕様ではありません。したがって、そのままでは輸送中に培地が漏れます。また、蓋と本体をシールテープのようなもので貼り合わせても、十分な密閉仕様とは言えません。
ウェルプレートやディッシュといった、いわゆる開放系容器をそのまま細胞のライブ輸送に用いることを実現できるのが、iP-TEC🄬シリコンカバーシリーズの「iP-TEC🄬ウェルプレートカバー」と「iP-TEC🄬ディッシュカバー」です。
当記事では、iP-TEC🄬シリコンカバーの仕様とセットの方法、他社容器との適合について解説します。
1.iP-TEC🄬シリコンカバーシリーズの仕様
ウェルプレートやディッシュの密閉には、蓋と本体にシールテープを貼ることや本体天面に粘着フィルムカバーを貼る方法もありますが、いずれも完全に密閉することはできません。
器材の粘着性や貼付面の形状の問題があるためです。
iP-TEC🄬シリコンカバーは貼るのではなく、嵌めて上から押さえるかたちになります。
iP-TEC🄬シリコンカバーシリーズは、「iP-TEC🄬ウェルプレートカバー」と「iP-TEC🄬ディッシュカバー」の2種類があります。
iP-TEC🄬のウェルプレートカバーは、滅菌済みで個装のウェルプレートカバーで、オートクレーブが可能です。iP-TEC🄬ディッシュカバーも同様に、滅菌済みで個装のディッシュカバーであり、オートクレーブが可能なシリーズです。それぞれ形状が異なるだけでコンセプトは同じです。
(1)細胞毒性のないメディカルシリコ-ンラバーを使用
iP-TEC🄬シリコンのカバーは、カバーとは言え培養空間を培地で満たすため、接液します。したがって、より安全性の高いシリコン原料を用いて作っています。
(2)シリコン本来の自粘着性を活用
粘着剤を用いると異物混入の要因になります。しかし、シリコンは材料自体に粘着性があるため、異物混入のリスクがありません。上から押さえつける圧力を加えることにより、シリコン本来の密閉性を出すことができます。
(3)薄膜部からガス交換が可能
ウェルプレートカバー、ディッシュカバーとも、窪みの部分に薄膜部を設けています。厚みは約300μmで、この程度の厚みになるとガス交換が可能になります。また、液封しつつガス交換が可能になる設計になっています。
なお、薄膜部は一体成型で形成されており、外れることはありません。
2.ライブ輸送時のセットの仕方
iP-TEC🄬シリコンカバーを被せるだけで、細胞のライブ輸送が可能になるわけではありません。さらに、シリコンカバーを上から押さえるための「専用押さえ板」と「iP-TEC🄬二次容器」、そして「iP-TEC🄬二次容器専用網状クッション」が必要になります。
シリコンカバーを押さえるのに必要なものは下記の通りです。
専用押さえ板はウェルプレート用とディッシュ用の2種類があり、未滅菌・オートクレーブ不可となっています。iP-TEC🄬二次容器は気密性と剛性に優れた容器で、アルコール噴霧とオートクレーブが可能です。また、iP-TEC🄬二次容器専用網状クッションはガス透過性とクッション性、ホールド性が高い点が特徴的です。
iP-TEC🄬ディッシュカバー用押さえ板
iP-TEC🄬ウェルプレートカバー用押さえ板
iP-TEC🄬二次容器
iP-TEC🄬二次容器専用網状クッション
iP-TEC🄬シリコンカバーのライブ輸送におけるセットの仕方は次の通りです。
- (1)細胞と培地が入ったディッシュやウェルプレートカバーなどにシリコンカバーを被せます。
- (2)押さえ板を乗せて押し付けます。これをiP-TEC🄬二次容器の底にセットします。
- (3)押さえ板の上に、網状クッションを乗せます。
- (4)iP-TEC🄬二次容器に蓋をセットし、内容物を押圧しながら4辺のロックをかけます。
iP-TEC🄬シリコンカバーのセットの最終的な断面イメージは、以下のようになります。
iP-TEC🄬シリコンカバーのセットの仕方は動画でも公開していますので、ぜひ参照してください。
3.iP-TEC🄬シリコンカバーシリーズと他社容器との適合
ディッシュやウェルプレートには、さまざまなサイズがあります。ディッシュであれば培養面の径であり、ウェルプレートであればウェル数などがあります。そして、メーカーもさまざまです。海外製であれば、Corning社製、Falcon社製、SARSTEDT社製、日本製であれば住友ベークライト社製、IWAKI社製など数多くあります。
残念ながら、iP-TEC🄬シリコンカバーはすべてのメーカーの、すべての培養容器に適合するわけではありません。また、すべての培養容器で検証できたわけでもありません。
しかし、iP-TEC🄬シリコンカバーの開発時には、一般的によく使用される容器をもとに設計しているため適合範囲は広くなっています。適合表を公開しているので、使用検討前にご活用ください。
■ウェルプレートカバー適合表
■ディッシュカバー適合表
まとめ
再生医療の実現化が進むにつれて細胞の外部への輸送要望がますます増えることが想定されます。
そして、その輸送する細胞の種類によって最適な容器形状は多種多様になることも想定されます。閉鎖系が最適な場合、開放系が最適な場合、既存容器の場合、専用に開発された容器の場合など、ライブ輸送が必要なときはiP-TEC🄬が対応していく必要があると考えています。
当記事で紹介したiP-TEC🄬シリコンカバーの基本コンセプトは特許取得も済ましており、展開が可能です。細胞のライブ輸送をお考えの方は、ぜひiP-TEC🄬にお問い合せください。