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2025/01/16 iPS細胞

マイコプラズマが細胞培養に及ぼす影響|検査法や除去についても解説

マイコプラズマは、非常に小さく、細胞壁を持たない細菌で、ヒトや哺乳類などさまざまな生物に寄生します。特に細胞培養において、マイコプラズマの混入は非常に深刻な問題で、コンタミネーションが発生することで研究の信頼性を著しく損なう可能性があります。

当記事では、マイコプラズマが細胞培養に与える影響、検査方法、対策などについて詳しく解説します。細胞培養におけるマイコプラズマコンタミネーションについて知り、実験をスムーズに進めましょう。

1.そもそもマイコプラズマとは?

マイコプラズマは、ヒトや哺乳類、昆虫、は虫類、植物の寄生体として、自然界に広く存在する細菌です。大きさが0.2~0.8 µmと非常に小さく、顕微鏡での観察が難しい場合もあり、通常の滅菌フィルターでは除去できないケースもあります。細胞壁を持たない原核細胞で、細胞培養液が濁らず、多くの抗生物質にも耐性があります。

現在、マイコプラズマには180以上の種類が報告されています。細胞培養実験の際に汚染元となるのは、主に以下の6種類です。

  • M.orale
  • M.arginii
  • M.fermentans
  • M.salivarum
  • M.hyorhinis
  • A.laidlawii

マイコプラズマは、細胞培養の際に発生しやすい汚染源の1つです。細胞培養を行う際は、マイコプラズマのコンタミネーション(混入)に十分注意する必要があります。

1-1.マイコプラズマが細胞培養に与える影響

細胞培養中にマイコプラズマコンタミネーションが発生すると、以下のような影響を受ける可能性があります。

  • 細胞の代謝の変化
  • 染色体の異常
  • 増殖速度の低下
  • DNAやRNAへのダメージ

マイコプラズマが混入した株は、機能性が低下するだけでなく、本来とは異なる挙動を示すことも珍しくありません。

マイコプラズマの厄介な点は、細胞培養液を濁らせないため、コンタミネーションに気づきにくいことです。マイコプラズマコンタミネーションが起きた場合、目に見える変化がすぐに現れなかったとしても、実験データの信頼性や妥当性が損なわれるリスクがあります。

1-2.細胞培養時にマイコプラズマが発生する原因

細胞培養時にマイコプラズマが発生する主な原因は、以下の通りです。

  • 実験中のおしゃべり
  • 不適切な無菌操作
  • ウシ胎児血清など、添加物からの混入

マイコプラズマは、会話中に放出される飛沫により、コンタミネーションが発生するリスクがあります。実験中は、マスクをしていたとしても、不要な会話は控えましょう。

また、不適切な無菌操作が原因でコンタミネーションが起きるケースも珍しくありません。マイコプラズマの混入を防ぐために、細胞培養中は研究室の実施基準などを正確に守りましょう。実験器具を管理する際、除菌スプレーで噴霧・拭き取りを行う方法も有効です。

2.マイコプラズマ検査の方法

細胞培養中にマイコプラズマ検査を行う方法は、主に培養法・DNA染色法・PCR法の3種類です。以下の見出しでは、3種類の検査方法の特徴や違いを詳しく見ていきましょう。

2-1.培養法

培養法は、マイコプラズマ試験用の細胞培地に検体を摂種し、マイコプラズマ寒天平板上で生育する検出方法です。検査にかかる期間は約4週間と、3種類の方法の中で最も長いものの、確実にマイコプラズマの検出ができます。培養細胞だけでなく、培養に使用される試薬のマイコプラズマ感染を検査できることもメリットです。マイコプラズマに感染している場合、培地プレートには目玉焼き状のコロニーが見られます。

2-2.DNA染色法

DNA染色法は、細胞とマイコプラズマの核を染色し、蛍光顕微鏡で変化を観察する検査方法です。上述した培養法より迅速に検査結果を確認できることが特徴で、間接ヘキスト染色法などの染色方法を用いた場合、72時間以内に感染の有無を調べられます。DNA染色によって直接培養細胞を染色すれば、検出感度は下がるものの、24時間以内に結果を出すことも可能です。

マイコプラズマに感染していない場合、蛍光顕微鏡で観察した際に、細胞核だけが青く光って見えます。一方、マイコプラズマに感染している場合、核以外の場所にもマイコプラズマが微粒子状または糸状に光っている様子を確認できます。

ただし、生細胞がない・少ない場合や細菌・真菌・酵母が汚染されている場合、正しく検査ができない場合があるため注意が必要です。またDNA染色法では、マイコプラズマコンタミネーションを確実に断定することはできません。

2-3.PCR法

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法は、培養細胞から採取したDNAを増幅させることで、マイコプラズマの遺伝子を検出する試験方法です。わずかな量のDNAを特異的に検出できるうえ、マイコプラズマ検出キットを使えば簡単に高感度の検査ができるため、マイコプラズマの検査方法として広く普及しています。

3.細胞がマイコプラズマに汚染されてしまったら?

培養中の細胞にマイコプラズマ汚染が発生したときは、新たな細胞株を入手して培養をやり直す方法、もしくは薬剤で除去する方法が一般的です。除去を行う際は、薬剤での処理後に再度コンタミネーション試験を行い、再増殖が見られなければ、マイコプラズマを除去できたと判断します。

薬剤でマイコプラズマを除去する場合、非常にまれではあるものの、除去後に再増殖するリスクがあります。そのため、新たな株を比較的容易に入手できるときは、培養をやり直したほうが確実です。ただし、貴重な株を培養している場合や株の再入手費用を抑えたい場合は、薬剤での除去を選択するケースも珍しくありません。

マイコプラズマの除去薬には、効果が異なる複数の種類があります。マイコプラズマの中には、特定の除去薬に耐性を持つものもあるため、使用する薬剤は慎重に選びましょう。

なおマイコプラズマの除去には、薬剤処理と再検査をあわせて1か月ほどかかる可能性があります。マイコプラズマを除去する方法はあるものの、時間と手間がかかるため、細胞を培養する際は、コンタミネーション予防を徹底することが大切です。

4.細胞培養でマイコプラズマの発生を防ぐには?

細胞培養中のマイコプラズマ対策としては、予防試薬を用いるのが一般的です。製品の種類にもよりますが、予防試薬に含まれた抗菌成分がタンパク質合成やDNA合成を阻害するなどの方法で、培養物のコンタミネーションを防ぐことが可能です。予防試薬にもさまざまな種類があり、種類によって期待できる効果が異なるため、状況に応じて適した試薬を選びましょう。

また先述の通り、マイコプラズマコンタミネーションを予防するには、実験中の行動に注意することも重要です。実験中は手袋や白衣などを常に装着し、定期的に交換して清潔を保ちましょう。使用前にエタノールで器具を消毒する、プレートやボトルに蓋をする、蓋をしていない容器に腕や手をかざさないなど、無菌操作を行う際の振る舞いも工夫してみてください。

加えて、感染の拡大を防ぐため、汚染細胞や新たに入手した細胞、マイコプラズマ否定試験が済んでいない細胞は、ほかの細胞に近づけないようにしましょう。

まとめ

細胞培養を行う際には、マイコプラズマの混入に注意する必要があります。しかし、マイコプラズマ以外にも、細胞に影響を与える物質は微生物や菌、ウイルス、その他細胞に毒性を示す物質などさまざまです。さらに、たとえば再生医療においては治療用細胞を入れるいわゆる一次容器からも物質の影響を受ける可能性があります。

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