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2024/11/19 再生医療

細胞培養を用いた再生医療とは?細胞の種類や再生医療の安全性も解説

再生医療は、細胞を培養して損傷した組織や臓器の機能を回復させる次世代の治療法として、世界的に注目されています。特に、iPS細胞やMSC(間葉系幹細胞)などが代表的で、これまで治療が困難とされてきた病気や怪我に対して、細胞を使った再生医療が実用化されれば、免疫拒絶反応のリスクを最小限に抑えつつ、治療の幅を広げられます。

当記事では、再生医療に用いられる細胞の種類や培養技術、安全性確保に向けた法整備について、詳しく解説します。

1.再生医療とは?

再生医療とは、細胞を培養し、失われた体の機能を回復させたり、病気の治療を行ったりする医療です。再生治療が実用化すれば、これまで根治が難しかった病気や怪我も治せる可能性があり、次世代の治療法として市場が急拡大しています。特に細胞・遺伝子治療の市場では、2030年までに年率30%以上の成長率が見込まれており、世界的にも注目度の高い分野です。

出典:経済産業省「再生・細胞医療・遺伝子治療」

研究加速によ​​って再生医療技術への期待が高まる一方、政府は再生医療実用化の推進に向けて、安全性の確保や研究開発課題の解消、法整備などの取り組みも行っています。

1-1.細胞培養とは

細胞培養とは、生体組織から細胞を取り出し、人工的な環境で維持・増殖を行う行為です。細胞培養の歴史は古く、19世紀にはすでに実験が始まり、20世紀に現在の基盤となる細胞培養技術が生み出されました。従来、細胞培養には高度な技術が必要でしたが、近年はクリーンルーム・安全キャビネットの開発や培養液成分の最適化などにより、効率よく培養できる環境が整っています。

再生医療の場合、培養する細胞には患者本人や健常人細胞ドナーなどの組織を用いるのが一般的です。細胞を適切に培養するには、インキュベーター(培養器)などを使用して、各細胞に適した温度・湿度・気体組成を整える必要があります。

2.細胞培養に使われる細胞の種類

研究が進むにつれて、再生医療にはiPS細胞やMSC(間葉系幹細胞)、ES細胞、組織幹細胞など、さまざまな細胞が用いられるようになりました。以下の見出しでは、細胞培養に使われる細胞の種類と特徴を、さらに詳しく見ていきましょう。

2-1.iPS細胞

iPS細胞(induced pluripotent stem cell)は、2007年に存在が発表された多機能幹細胞です。多機能幹細胞とは、培養によって血液や骨、心臓、肝臓などあらゆる組織・臓器に分化する能力を持つ細胞をさします。人間の皮膚や血液を構成する体細胞に4つの因子を導入して培養し、体細胞が多機能幹細胞に変化する仕組みです。患者自身の体細胞からiPS細胞を作って必要な組織・臓器の細胞に分化させることで、移植時に問題となりやすい免疫拒絶反応のリスクを避けられます。

iPS細胞は、「一度分化した細胞は初期化しない」という従来の常識を覆す発見として世界中の注目を集め、2012年度にはノーベル生理学・医学賞にも選ばれました。現在はさまざまな国で​​疾患iPS細胞の研究が進み、疾患研究や薬の副作用の検証、候補薬スクリーニングなどに利用されています。

出典:CiRA「iPS細胞とは?」

出典:JST「iPS細胞を樹立」

2-2.MSC(間葉系幹細胞)

MSC(mesenchymal stem cell)は、1960~1970年代にAlexander Friedenstainによって発見された多分化能性細胞です。間葉系幹細胞とも呼ばれ、人間の骨髄や脂肪組織、臍帯などさまざまな組織に存在することが知られています。

MSCは、骨や軟骨、心筋細胞、血管、外胚葉由来の神経細胞、内胚葉由来の肝細胞、神経細胞を補佐する役割を持つグリア細胞などに分化できる細胞です。日本では、急性移植片対宿主病や脊髄損傷の治療を目的として、MSC由来の再生医療等製品が用いられています。また、MSCを用いた臨床研究は海外でも数多く行われており、MSC由来の再生医療等製品が承認された例もあります。

2-3.ES細胞

ES細胞(embryonic stem cell/胚性幹細胞)は、iPS細胞の発表以前まで、再生医療分野で中心的な存在として注目されていた多能性幹細胞です。人間やマウスの初期胚から将来胎児になる細胞を採取し、あらゆる細胞に分化できる能力(多分化能)を保持したまま培養できる状態にしたもののことをさします。受精卵に近い性質を持つES細胞は、人間の体を構成するあらゆる細胞に分化できる上、適切な環境を保てば長時間維持できることが特徴です。

ただし、提供者から採取したES細胞は患者にとって他者の細胞であるため、移植の際の拒絶反応の対象となります。またヒトES細胞の元となる胚は、不妊治療の際に不要となった余剰胚から作られており、大量入手が困難です。加えて、将来胎児になるはずの胚を治療に利用する行為に関わる倫理的問題もあり、ES細胞の再生医療への応用にはさまざまな研究課題が残されています。

出典:東邦大学「ES細胞(ES cell (Embryonic Stem Cell))」

2-4.組織幹細胞

組織幹細胞(tissue stem cell)とは、肝臓や骨髄などに存在する未分化の細胞の総称です。ES細胞やiPS細胞のようにあらゆる細胞に分化することはできないものの、筋肉や軟骨、神経などさまざまな細胞に分化できるため、再生医療の分野で注目されていました。

ただし、さまざまな細胞に分化する組織幹細胞は、成体の中に微量にしか存在しないため、十分な細胞数を確保することが困難です。また、あらゆる細胞に分化できるヒトiPS細胞の存在が樹立されたことで、再生医療の研究分野の中心はiPS細胞に移りつつあります。

出典:東邦大学「組織幹細胞(Tissue Stem Cell)」

3.再生医療に用いる細胞培養はどのように行う?

再生医療に用いる細胞培養を行う際の一般的な流れは、以下の通りです。

1培養に必要な道具や研究施設・設備を整える
2細胞を入手する
3容器で細胞を培養する
4増えた細胞を新しい容器に植え替える
5凍結保存などの方法で、培養した細胞を処理する

また、細胞培養には、以下のような設備が必要です。

【必要な設備】

  • クリーンルーム(無菌環境を保つ)
  • 安全キャビネット(異物混入や作業者への感染を防ぐ)
  • インキュベーター(温度・湿度などの培養条件を制御する)
  • 培養用のプラスチック製品・消耗品(培養容器・チューブ・ピペットなど)
  • 細胞の検査・解析設備
  • 細胞を観察・記録する設備
  • 細胞を凍結保存する設備など

細胞培養時の安全性を確保し、作業を効率化するには、高い清浄度を保った設備を用意した上で、正しい手順で作業を行うことが大切です。

4.再生医療における細胞培養の安全性

細胞を用いた再生医療の分野では、安全性と信頼性を確保するために「再生医療等安全性確保法」が施行されています。再生医療等安全性確保法は、再生医療等を迅速・安全に提供するために提供者が講ずべき措置を明らかにするとともに、特定細胞加工物の製造許可等の制度を定めた法律です。

出典:厚生労働省「再生医療等安全性確保法について」

また2017年には、細胞培養やヒト多能性幹細胞に関わる有識者グループが、以下の「細胞培養の基本原則」を発表しています。

  1. 培養細胞は生体の一部に由来することを認識すること
  2. 入手先の信頼性、使用方法の妥当性を確認すること
  3. 培養細胞への汚染を防止すること
  4. 培養細胞の管理・取扱い記録を適切に行うこと
  5. 培養作業者の健康と安全、周囲環境への配慮を行うこと

出典:J-STAGE「「細胞培養における基本原則」の提案」

細胞培養を行う際は、法律や基本原則についても正しく理解し、遵守する必要があります。

まとめ

再生医療は、細胞を用いて失われた機能を修復する革新的な技術です。iPS細胞やMSCなどの多能性幹細胞を利用した治療法は、従来治療が難しかった病気にも新たな希望をもたらすため、今後も注目を集める分野だと言えます。

再生医療における細胞培養では、培養された細胞をいかにして医療施設に運ぶかも非常に重要な要素です。iP-TEC🄬では細胞の非凍結輸送を中心に取り組んでおり、さまざまな課題解決に向けて尽力しています。

再生医療における細胞輸送の重要性が増す中、常温での輸送は可能なのか?

iP-TEC🄬の取り組みに興味を持たれた方は、ぜひ一度お問い合わせください。