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海外学会報告 ~MPS World Summit 2025 @ブリュッセル~
iP-TEC®では、閉鎖系灌流培養をテーマにした製品開発を推進しています。近年、この灌流培養技術が注目を集めている背景の一つに、『MPS(Microphysiological Systems/生体模倣システム)』の進展があります。
MPSは、ヒトの臓器構造や機能をマイクロチップ上で再現することで、薬剤の有効性や毒性を高精度に評価できる次世代技術です。
このたびiP-TEC®チームは、2025年6月にベルギー・ブリュッセルで開催された「MPS World Summit 2025」に出展し、世界各国のMPS技術の最新動向を視察・調査してまいりました。本記事では、その報告を行います。
◎MPSが注目されている理由
近年、MPSが世界的に注目されている背景には、以下のような要因があります。
1. 動物実験に代わる「ヒトに近いモデル」
- MPSは、動物実験代替法の一つとして、ヒト細胞由来の三次元組織モデルやオルガノイド、臓器チップなどを用いて、生体に近い生理反応を再現します。
- 従来の動物実験では困難だった「ヒト特有の反応」や「疾患の特異性」、「副作用」の評価が可能になります。
- これは、動物実験の削減を目指す『3Rs原則(Replacement, Reduction, Refinement)』にも合致しており、倫理的観点からも支持され、動物実験代替法として注目されています。
2. 創薬・毒性評価の精度と効率の向上
- 前臨床段階において薬剤の有効性・毒性評価が可能となるため、臨床試験前の予測精度が大幅に向上します。
- これにより、治験段階での失敗リスクを低減し、開発コスト削減や期間短縮にも貢献します。
- FDA(米国食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)なども、MPS活用を積極的に支援しています。
3. 難病・希少疾患モデルの構築
- 患者由来iPS細胞などを用いることで、従来再現が困難だった神経疾患や遺伝性疾患のin vitro再現が可能になります。
- 臨床試験が難しい希少患者でも、治療薬開発への道が開けます。
4. 国際規制機関・製薬企業による導入拡大
- FDAやNIH(アメリカ国立衛生研究所)をはじめとした各国規制当局が、MPS技術を新薬評価や毒性試験の一部として導入しつつあります。
- 製薬企業においても、開発初期段階の絞り込みやモデル動物不要の戦略として、導入事例が増加しています。
5. 最先端技術との融合
- MPSは、マイクロ流体工学、バイオマテリアル、AI技術、センシング技術と融合し、「マルチオルガンチップ」や「ヒト全身モデル」といった複雑系へと進化しています。
- こうした進化は、再生医療や個別化医療にも大きく寄与すると期待されています。
◎所感
公式発表によると、今回の「MPS World Summit 2025」には約1,500名が参加し、過去最多を記録。出展企業も約100社に上り、MPS技術への関心が年々高まっていることを実感しました。
日本からも8社が出展し、世界に向けての積極的な情報発信が行われていました。日本企業の存在感は確実に増しており、国内におけるMPS分野への関心の高さも明らかです。
一方で、参加者の多くはまだ基礎研究段階にあり、MPS技術全体としては発展途上にあります。今後は、応用研究や実用化フェーズへの移行が進むことで、製薬企業をはじめとする産業界からの参加がさらに拡大すると見込まれます。
会場内の様子 弊社ブース ブースにてお客様ご案内中
◎まとめ
iP-TEC®は、こうした将来性を見据え、閉鎖型灌流培養システムのさらなる製品開発を通じて、MPS分野の進展、さらには創薬産業全体の発展に貢献してまいります。今回、展示も行った「マイクロチューブポンプシステム」や「灌流培養トライアルポンプキット」(参照URL:こちら)、より手軽に実験が行える「(仮称)ポケットタイプ灌流ポンプキット」などの開発を進めていきます。現場での使いやすさを追求し、研究者の皆さまのニーズに応える製品展開を目指してまいります。
製品に関するご質問やご要望がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
今後とも、iP-TEC🄬をよろしくお願いいたします。